ハンス J・ウェグナー「ザ・チェア」

ザ・チェア

 1950年のことです。アメリカのインテリア専門誌「インテリアーズ」の表紙を、一脚の椅子が大きく飾りました。ハンス J・ウェグナーがデザインした「ザ・チェア」です。当時の名前はまだ「ラウンド・チェア」という名前でした。

 ヨハネス・ハンセン社が製造したその椅子は、その名の通りアームから背へ、ちょうど丸く円弧を描くように、流れるようなスムーズな曲線がつくられていました。見るからに手触りの良さそうな温かみのある座面は藤で編まれ、軽快な中にも一種の気品さを感じさせるデザインでした。

 第二次世界大戦以前の木製家具の高級品にはマホガニーが多く使われていましたが、この材は入手が困難になっていて、北欧においてもこれに代わる素材として東南アジア産のチーク材を開発することに成功していました。

 第二次世界大戦後というのは、まだ戦争からの余韻が冷めず、人々は戦争に荒れた心の安らぎとして、飛行機やジュラルミンの世界の対極にある手作りの感覚、手触りの良さなどを、木製品の中に求めるようになりました。この流れの中、木工業が盛んだった北欧の製品が戦後いち早く復興して、アメリカのマーケットにすごい勢いで流れていったことは創造できるでしょう。

続く

 

 

 

 

 

 

 

 


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